「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」

「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」という本を読みました。非常に興味深い本だったので、ご紹介します。


ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)

ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)


私も情報収集に使っている人気ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」http://randomwalker.blog19.fc2.com/ の著者水瀬ケンイチさんと、評論家である山崎元さんによる共著です。


本の中身もそうですが、非常に面白いのは、この本が共著で書かれたいきさつですね。


評論家の山崎さんがブロガーである水瀬さんを、「一緒に書きませんか」と誘ったとのこと。結果的に、水瀬さんが初級者向けにインデックス投資家の生の姿を、山崎さんが体系だった理論を書くことで、メリハリのある構成になりました。


プロの評論家が、カリスマブログとはいえ、市井のブロガーを招き入れたというところがすごいのです。本というのは、プロフェッショナルが書くもの、まして投資本、金融経済本というジャンルだったらなおのことだという世間の先入観を見事に覆しました。「何億円儲かる株投資」的なギャンブル投資本みたいなものを除けば、本職専門家ではない方が投資本を書くというのは、画期的なことではないでしょうか。


投資は難しいものという先入観は根強くあり、まあ実際簡単にはできますが手間がかかるゆえわかりづらい、ハードルが高いのも事実です。山崎氏や編集さんの狙いもおそらくそこで、自分たちだけで書いたら、いくら噛み砕いても世間的にみるとハードルの高い本ができあがるし、ハードルを下げるためにどうしようかと悩んだ結果の選択だったのでしょう。


この「戦略」は結果的に大成功してます。はっきりいって、山崎氏の「理論編」だけで本を編んだら、とっつきにくいは、読み切れないは、よくわからないはで、ますます初心者が投資から遠ざかる結果になってしまったでしょう(山崎氏が初心者向けに徹底的にハードル下げた本は既に出ていますしそれ以上語ることはなかったはず。)しかし水瀬さんの特徴である、平易で、わかりやすく、目線を読者にあわせた語り口は、そのハードルの高さを心理的に取り払ってくれます。だから読者は、「あ、山崎さんのわからない箇所は、飛ばし読みしていいんだ」と気づくことになります。この気づきが大事です。投資なんてそもそも、全部理解してからやろうとしたら、一生はじめられないんですから。


そう、この本は「戦略勝ち」です。このタイトルと、カリスマブロガーと専門家の共著の新書という時点で、売れないわけがない。しかも手に取った人は、最初数ページの水瀬さんの平易な文章をぱらぱらみて思うわけです。「あ、これなら読める!」


唯一難を言えば、やはり読み進めるうちにどうしても山崎氏パートの難しさに挫折してしまいそうになること。せめて、複数章にわけてサンドイッチにすればよかったのにと思いました。真ん中の山崎氏パートでは、難易度が高い文章が長々と続きますが、せめてこれが10ページなら読み切れるのにと思わなくもない。編集さんもいろいろ苦慮しての結果だとは思いますが、まったく性質の違う二人の著者(投資スタンスも実はけっこう違う二人の著者)の文章を並べるのだから、もうちょっとうまいまとめ方はないものかなと思いました。


しかしすごい世の中になったものだと思います。ブロガー(非専門の人)と専門家が、文字通り、併置されたわけですから。表現の垣根がどんどん下がってる世の中なのだなと、実感しました。おいらにもチャンスあるかなあ?(ないよ!)